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生態系の価値と機能

 森林・草原・淡水・海洋など、ひとまとまりの空間を生態系と言います。それぞれの生態系は、野生生物の生息地として生物多様性の維持に重要であるだけではありません。人間の生活にとっても、以下のような価値や機能があります。

  • 食糧の供給:淡水や海洋からの漁獲、野生植物の採集や野生動物の狩猟
  • 水の供給と調整:約46億人が森林システムから供給される水に依存
  • 木材、繊維、燃料の供給:26億人が木材をエネルギー源として利用
  • 気候の調整:陸域生態系が大気中のCO2を吸収
  • 自然災害の防止:土壌による保水機能や洪水防止、暴風雨の軽減

自然環境の破壊と生物の絶滅

 約1300人の世界の科学者が約4年間かけてまとめ、2005年に発表された「ミレニアム生態系評価」では、自然環境の変化について以下のように報告しています。

  • 世界の森林面積は過去300年間で半減した
  • 世界のマングローブ林は、過去20年間に35%が失われた
  • 世界のサンゴ礁は過去数十年間に20%が失われ、さらに20%が劣化している
  • 世界の陸水面積の50%が消失した

 このような自然環境の破壊によって、地球の歴史的には100万種あたり0.1〜1種だった絶滅の平均速度は、記録されていない種を含めると、現在は1000倍以上になっているものと推測されています。今世紀中には、ほ乳類の25%、鳥類の12%、両生類の32%が絶滅する恐れがあります。

自然環境の破壊の原因

 森林や草原などの陸上生態系の破壊の直接的な要因は、農地への転換を主とした土地利用の変化が最も大きいとされています。その影響の大きさは現在、温帯林では小さくなっているものの、熱帯林では急速に増加しています。

 淡水生態系では、水管理の変更、汚染、外来種の導入が大きな要因となっています。

 沿岸部では、都市の拡張、リゾート開発、港湾開発、養殖、工業地の開発、浚渫・干拓、護岸施設等の建造のほか、汚染が大きな要因となっています。

 また、地球温暖化による影響も、生物種の分布、個体群の大きさ、繁殖や渡りの時期、森林などでの病害虫の発生などにおいて、すでに見られています。

自然環境の破壊による影響

 自然環境が破壊されることによって、水、健康、安全、社会関係など、人間の生活にもさまざまな影響を及ぼしています。

  • 湿地やマングローブ林などの生態系が失われたことにより、自然災害を軽減する自然の機能が顕著に減少した
  • 洪水や大火災の大きさが、過去50年間に著しく増加した。1990〜1999年の間に、10万人以上が洪水によって死亡し、2430億ドルの被害を受けた
  • 森林伐採、ダムや道路の建設、農地転換、都市化などが、伝染病の流行が拡大する原因となっている
  • 沿岸水の汚染によって引き起こされる下痢などの健康被害のコストは、年間160億ドル
  • 1990年代のCO2排出量の20%は、森林伐採による土地利用の変化等に起因している
  • 熱帯・亜熱帯地域の森林伐採と砂漠化により、これらの地域の降水量が減少した
  • 野生生物やその生息地の破壊や減少によって、それらと密接につながっている先住民社会が、資源の利用が困難になったり、生計の手段が奪われるなどの影響を受ける

 土壌の劣化、保水機能の低下、伝染病の流行、水質汚染などは、長い時間をかけて変化するため、影響が現れるまでに時間がかかることに注意が必要です。また、回復するまでの時間についても、例えば、破壊された自然環境が再生するまでに数百年かかります。

自然環境を守るための対策

 これまでの対策の問題点は、食糧や木材などの生産を増加させるといった短期的な利益の追求に集中し、土壌の維持、水供給、自然災害の緩和といった生態系の管理については、十分に考慮されてきませんでした。

 政策面の対策としては、環境税や補助金の導入などが考えられますが、企業や消費者にも、生産物への表示、認証制度・環境ラベルの普及(例として、レインフォレスト・アライアンス認証コーヒーFSC森林認証製品など)が期待されます。

参考書籍

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