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 過去に繁栄した文明の崩壊には、環境破壊が原因となっていることが多いことが、さまざまな研究によって明らかになってきています。

 石炭や石油が発見されるまで、森林資源は建築物や船の材料だけでなく、主な燃料として利用されてきました。

 森林の伐採が進むと水の涵養能力が失われ、雨季には洪水を、乾季には水不足を引き起こします。洪水によって土壌が流出すると、農地をやせさせます。また、下流域に堆積して湿地が形成されると、蚊が繁殖し、マラリアが流行する原因にもなります。

 そして、森林資源が枯渇すると、建材の生産、船の建造、金属の精錬などができなくなり、文明崩壊の一因となってきました。

ミケーネ文明

 ギリシア人によって紀元前15〜13世紀頃、ミケーネ、ティリンスなどで栄えました。BC1500年頃には、ギリシア、クレタ、中近東との交易を支配し、土器・青銅器の製造と海上輸送のための船の建設に木材を必要としました。

 文明の末期には、人口が増大して森林破壊が進みました。その結果、アルゴス平野が洪水に襲われるようになり、ティリンスには広大な湿地が形成されました。

ギリシア文明

 ミケーネ文明の崩壊後、紀元前750年頃から、ペロポネソス半島にポリスが多数成立しました。

 アテネとスパルタが争ったペロポネソス戦争では、アッティカの森が焼き払われたことにより、土壌浸食が進んで湿地が拡大し、マラリアを媒介するハマダラ蚊が発生するようになりました。アンフィポリスの森がアレクサンダー王に奪われたため、アテネは敗れました。

ローマ文明

 紀元前753年に王国として建国後、共和制、帝政を経て、476年に西ローマ帝国滅亡するまで、約1200年もの間存続しました。

 全盛期には、風呂、住宅のためのレンガ、浴場・導水橋・神殿・闘技場などを建設するための石灰、銀の精錬のために大量の薪が消費されました。森林伐採による土壌浸食によって湿地が広がり、ハマダラ蚊が発生して疫病が大流行しました(165〜180年、251〜266年)。国家滅亡と、その直接の原因となった民族の大移動の背景には、資源の枯渇や気候の寒冷化があったと考えられています。

イースター島

 モアイで有名なイースター島には、5世紀頃にポリネシア系の人々が居住しました。モアイを切り出された山から海岸まで運ぶためには、木の幹のソリが使われました。700〜800年からヤシなどの樹木が減少し始めています。

 森林破壊によて土壌が劣化し、また、森林資源の枯渇によって、カヌーを作ることができなくなったため、漁業もできなくなりました。その結果、18世紀に部族間の抗争が発生して人口が激減しました。

現在のグローバルな文明

 現在、古くから文明が発展した温帯地域の森林はほとんど失われ、広大な森林が残っているのは熱帯地域と亜寒帯地域だけです。しかも、熱帯林は木材利用のための伐採や商品作物のプランテーションなどに転換され、急速に減少しています。

 今や、森林の破壊は、地域のレベルの資源の枯渇、土壌流出、洪水、渇水を招いているだけでなく、地球規模の温暖化の原因にもなっています。

 過去の文明の歴史から考えれば、現在の文明も森林破壊が続けば、いずれ崩壊することが可能性があります。しかも、過去と異なり、現在は資源の獲得がグローバルになっているので、世界レベルで同時に崩壊する危険さえあるかもしれません。

参考書籍

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